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本屋でもっとも万引きされている村上春樹の小説

www.cbc.ca インターネットを徘徊していると、このニュースに遭遇した。トロントのある本屋において、最近では、村上春樹の小説がもっとも万引きに遭っているというものである。記事の本文を読んでみると、かつては頻繁に万引きされていたのは、ケルアックや…

クラーナハ展―500年後の誘惑/蠱惑的な女のまなざしに取り憑かれ

国立西洋美術館で開催されていた、会期終了目前のクラーナハ展に駆け込んだ。この企画展に足を運んでいなければ、もしかするとクラーナハについて思考をめぐらせる機会は今後訪れなかったかもしれない。画家に焦点をあてた企画展は、ヨーロッパにおいては幾…

FESPACO 2017/アフリカ映画、コンペティション部門の作品たち

FESPACO 2017(第25回)の長編フィクション部門の選出作品が発表された。FESPACO とは、ブルキナファソの首都ワガドゥグで二年に一度開催される映画祭 Festival Panafricain du Cinéma de Ouagadougou(ワガドゥグ全アフリカ映画祭)の通称であり、ブラック…

欲望の交差点、ひとを喰ったような映画 / ニコラス・W・レフン『ネオン・デーモン』

鑑賞する前に、どこかで「ひとを喰ったような映画だ」という評を目にした。カンヌの舞台では、歓声と怒号が同時に飛び交ったという。わたしはそれなりに身構えて鑑賞に臨んだ。そして劇場を出るとき、なるほど、まさに〈ひとを喰ったような映画〉にほかなら…

『ストレンジャー・シングス 未知との遭遇』―― 見事な 80 年代へのゲートウェイ・ドラマ

わたしはあらかじめ告白しておく。この作品について、いまの段階では願うとおりの文章が書けるとは到底思えない。80年代のアメリカでつくられたさまざまな作品群にオマージュが捧げられているのはわかるのだが、肝腎の引用先のカルチャーに精通しているとい…

2016年、美術鑑賞の記録

テレビで日曜美術館の「ゆく美くる美」の特集を録画しておいたものを観た。せっかくなのでわたしも、2016年に足を運んだ展覧会のことを振り返っておこうと思う。美術に触れるという意味では、さほど充実していたとは言えなかった一年だったが、新たな一年へ…

『天空からの招待状(看見台湾)』で寝落ちをするよい暮らし(という妄想)

わたしはこの数週間、台湾に執心している。インターネットの大海で「台湾」の文字が浮遊していないかとつねに目を光らせているし、友人たちと食事をするとなったら積極的に台湾料理店を選ぶようにしているし、侯孝賢や楊德昌といった台湾の監督たちのフィル…

ギュスターヴ・モロー美術館 ――十九世紀という〈崇高〉の経験

今年の春、とある理由で一ヶ月ほどパリに滞在することになったのだが、そのときに訪れたギュスターヴ・モロー美術館(Musée Gustave Moreau)での体験を記しておきたい。わたしはこのとき、崇高の意味を知ったのだった。 ギュスターヴ・モロー美術館は、パリ…

阪神タイガースの2016年、来季への無邪気な期待とともに

2016年のシーズンが終わってから数ヶ月が経ち、年の瀬を迎えるにあたって、すでにプロ野球観戦の禁断症状が出かかっている。症状のひとつは、とくにおもしろい記事は見当たらないはずなのに、やたらとインターネットでスポーツニュースを覗きにいっていると…

ゴーゴリ『外套』の命名にまつわる箇所について

彼の名はアカーキイ・アカーキエウィッチといった。あるいは、読者はこの名前をいささか奇妙なわざとらしいものに思われるかもしれない。しかし、この名前はけっしてことさら選り好んだわけではなく、どうしてもこうよりほかなに名前のつけようがなかった事…

MY FAVOURITE FILMS IN 2016

わたしたちが映画について語るときにしばしば発せらるる「今年は豊作であった」という謂に、何ら意味を見出せなくなってしまった。考えてみれば当たり前でもある。いまの時代において〈すべての映画〉という概念の質的な掌握は背理でしかなく、およそ恣意的…

水林章, "Une langue venue d'ailleurs" ―― 異邦のことばを話すということ

嫉妬した ――と表現するのがいちばん近いかもしれない。フランス語を学び、フランスでいくらかのかけがえのない時間を過ごし、そしてフランスという存在そのものへの執着を多少なりとももっているわたしにとって、そのような道の遥か先をゆく水林先生の存在は…

VIDEOTAPEMUSIC "Her Favorite Moments"

www.youtube.com VIDEOTAPEMUSIC『世界各国の夜』。このアルバムを手にしてからおよそ一年のあいだ、いったいどれほどの夜がこの愛おしき音楽によって救われただろうか。終電を逃し、ひとりで夜の東京の街をさまよいながら、イヤフォンを耳に突っ込んで歩き…

「日本におけるキュビスム ― ピカソ・インパクト」展

埼玉県立近代美術館で開催中の「日本におけるキュビスム ― ピカソ・インパクト」に訪れた。わたしはわりに近くに住んでいるのだが、この美術館を訪れたのは、草間彌生展以来二度目である。あのときは大盛況だった模様で、たしかに展示も充実していて面白かっ…

ルシール・アザリロヴィック『エヴォリューション』―― 時代遅れの旧き想像力

ひどかったとしか言いようがない。確かに美しいシーンはあった。とりわけはじめの海中のシーンは息を呑むような美しさを湛えていた。神秘的な碧の海に、鮮やかな赤いパンツを履いた白い肌の少年が潜ってくる。そのような色彩の感覚はいい。美点をあげようと…

アメリカという眩い夢のつづき ―― リチャード・リンクレイター『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』

『Boyhood(6才のボクが、大人になるまで。)』という傑作のあと、リチャード・リンクレイターが新たに世界に送り出したのは、本人の語るように前作の続編のようでもあり、またある意味では、まったく真逆の指向性のもとにつくられた(というように思われる…

錦織圭さんの2016年

テニスのルールすらほとんど知らなかったわたしが、あるときテニスというスポーツの熱狂的なファンへと変化を遂げてから一年半ほどが過ぎた。今年ははじめて一年を通してテニスの動向を追い続けてきた年だったのだが、まったくもって愉しくて仕方がなかった…

高山俊は明らかに頭がいい

11月も残すところ数日になって、ようやくプロ野球の2016年のMVPが発表された。パ・リーグは大谷、セ・リーグは新井である。セ・リーグのMVPは、カープのうちで選ばれる可能性があった選手は何人かいたが、かならずしも数字に現れないここぞというときの活躍…

ソロモン諸島の音楽にたちまち恋に落ちて

四の五の言わずにとりあえずこのヴィデオを観てほしい。 www.youtube.com フィリピンのカリンガ族の楽器だというトガトン(Tongatong)のことを調べ、YouTubeで目についたものを片っ端から再生していたところ、たまたまソロモン諸島のサンタ・イザベル島の部…

ジェフ・ニコルズ『ショットガン・ストーリーズ』

先日鑑賞した『ミッドナイト・スペシャル』('16)が非常によかったので、ジェフ・ニコルズの過去作品を観はじめている。ことしのベルリン映画祭のコンペに出品された『ミッドナイト・スペシャル』の前にはすでに三作の監督作品があり、処女作である『Shotgu…

ミア・ハンセン=ラヴ『L'Avenir』

イザベル・ユペールの出演している作品は実のところあまり観ていなくて、いちばん記憶に残っているのはマイケル・チミノ『天国の門』('80)で奇跡的な美しさを放っていた彼女の姿である。あれから三十五年ほどのときを経て、いま63歳になった彼女は、もちろ…

ヤニキ

ヤニキ - 新・なんJ用語集 Wiki* 無為に囚われるままにネットサーフィンをしていると、「新・なんJ用語集」で「ヤニキ」と書かれた項目を見つけた(新・なんJ用語集をだらだらと読んでいる暇なんて本当はぜんぜんないはずなのだが)。当然、われらが金本監督…

「自由貨幣」がビットコインの台頭により日の目を見るかもしれないという話

www.monde-diplomatique.fr 仏月刊誌の Le Monde Diplomatique をぼんやりと眺めていたら、なかなか興味ぶかい記事に遭遇した。"Le banquier, l'anarchiste et le bitcoin"(「銀行家、アナーキスト、そしてビットコイン」)と名付けられたものである。本文…