2017-12-26から1日間の記事一覧

ピーター・チャン『最愛の子』―― 群像劇といううっとうしさの克服

気が向いたので書く。 ピーター・チャン監督の『最愛の子』(2014)を観た。2016年の年始にこの映画も劇場公開されていたようなのだが、わたしのアンテナでは中国映画が引っかかることはあまりなく、表題には見覚えがあるようなないような、というおぼろげな…

その霧の曖昧さを肯定するか ―― カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』読書会レポート

イギリスでは、カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞のニュースはさして報道されなかったそうだ。かつてノーベル文学賞を獲ったイギリス人作家も同様だったようである。というのも、イギリスでは、ブッカー賞のほうが権威があるので、ノーベル文学賞にはさ…

松岡茉優さん、あるいは単一か複数かの問い ―― 大九明子『勝手にふるえてろ』

快哉を叫びたくなるほどの傑作だ。いったいどれだけ生気に満ち満ちているだろう。この映画に流れる時間は、松岡茉優という女優のもつはちきれんばかりのエネルギーによって満たされている。オカリナ(片桐はいり)が玄関先でヨシカをひと目見てつぶやいた言…