文学

現代海外文学読書会 '19 - '22

現代日本文学読書会の記録を認めたので、もうひとつの海外文学読書会のことも書き留めておく。2019年4月に何人かの友人知人を誘ってはじめて、コロナ禍による一時中断も挟みながらも、だいたい月に1回のペースで3年ぐらい続けていた。わたしの怠惰もあって30…

現代日本文学読書会 '21 - '22

職場の同僚を何人か誘って、2021年1月からほぼ月に1回のペースで、現代日本文学の読書会を開催していた。あらかじめ一冊選書をして、読書会当日までに読了してくればよいというルールで、およそ二年にわたって続けることができた。わたしの身辺状況が変わっ…

本棚(2021年4月)

2021年4月の本棚。今月はあまり読めなかった。積ん読はなし。 * * * 早稲田松竹でダミアン・マニヴェルの『イサドラの子供たち』の上映に駆けつけて、とめどなく溢れ出す涙でマスクを完全にだめにしてしまった。二年前のヤマガタではじめてこの作品を観たと…

本棚(2021年3月)

2021年3月の本棚。『星の時』から左は積ん読です。 * * * 雪舟にご執心。きっかけは李禹煥が雪舟の魅力を語るという「日曜美術館」の番組録画を見たことだった。それまで雪舟についてはほとんど教科書に載っている知識しかないに等しかったのだが、番組で紹…

本棚(2020年12月)

一年前の師走、わたしは何を考えていたのか、ほとんど憶えていない。日記の類も断片的にしかつけておらず、そこに残されていないものは、ひょっとすると失われてしまったのではないかと悲しい気分に陥ってしまう。 みずからの健忘症に抵抗せねばならない! …

いま、ふたたび〈変身〉するグレゴール・ザムザをめぐる身体性 ―― ふたつの『変身』をめぐって

カフカの小説をときどき身体がひどく欲するので、仕方なしに餌としてカフカを与えることがある(カフカのことを考えはじめると、思考パターンまでもがカフカ的モチーフに侵食されてしまう)。今回もその生理現象が生じたので、フランツ・カフカ『変身』を読…

その霧の曖昧さを肯定するか ―― カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』読書会レポート

イギリスでは、カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞のニュースはさして報道されなかったそうだ。かつてノーベル文学賞を獲ったイギリス人作家も同様だったようである。というのも、イギリスでは、ブッカー賞のほうが権威があるので、ノーベル文学賞にはさ…

奇矯な想像力に耽溺する悦び ―― エイモス・チェツオーラ『やし酒飲み』

エイモス・チェツオーラ『やし酒飲み』(土屋晢訳, 岩波文庫)を読んだ。ナイジェリア出身のチェツオーラが1952年に著した小説である。「アフリカ文学」にカテゴライズされる小説のなかで、おそらく唯一、岩波文庫に入っている作品ではなかろうか*1。ひょっ…

本屋でもっとも万引きされている村上春樹の小説

www.cbc.ca インターネットを徘徊していると、このニュースに遭遇した。トロントのある本屋において、最近では、村上春樹の小説がもっとも万引きに遭っているというものである。記事の本文を読んでみると、かつては頻繁に万引きされていたのは、ケルアックや…

ゴーゴリ『外套』の命名にまつわる箇所について

彼の名はアカーキイ・アカーキエウィッチといった。あるいは、読者はこの名前をいささか奇妙なわざとらしいものに思われるかもしれない。しかし、この名前はけっしてことさら選り好んだわけではなく、どうしてもこうよりほかなに名前のつけようがなかった事…