美術

美術鑑賞記録|2023

思いだせる限りの2023年の美術鑑賞記録。パリに居を移した2022年12月に訪れたものも含んでいますが、パリでの常設展やギャラリーは憶えていないので除外。年間を通じてもっとも印象に深かった展覧会は、アレックス・カッツ(グッゲンハイム美術館)、トーマ…

フュースリ展 Füssli, entre rêve et fantastique

パリ8区のジャックマール=アンドレ美術館で開催されていた「Füssli, entre rêve et fantastique(フュースリ、夢と空想のはざまで)」という企画展に足を運ぶ。フュースリ(1741-1825)は、スイスに生まれ、18世紀後半から19世紀初頭にかけてイギリスで活躍…

本棚(2021年3月)

2021年3月の本棚。『星の時』から左は積ん読です。 * * * 雪舟にご執心。きっかけは李禹煥が雪舟の魅力を語るという「日曜美術館」の番組録画を見たことだった。それまで雪舟についてはほとんど教科書に載っている知識しかないに等しかったのだが、番組で紹…

「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」/セザンヌ《赤いチョッキの少年》

国立新美術館の「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」に足を運んだ。世界大戦に乗じて武器商人として財を成したスイスの実業家のコレクションで、2008年の盗難事件をきっかけに閉館となり、2020年までに所蔵作品はすべて改装中のチューリヒ美術館に寄…

「単色のリズム 韓国の抽象」―― 空間そのものの穏やかな美しさについて

会期終了間際に東京オペラシティの「単色のリズム 韓国の抽象」に滑りこんだ。オペラシティのアートギャラリーはいつも落ちついた雰囲気があって、のびのびとできるので偏愛している(とはいえ、「梅佳代展」とか、「篠山紀信展 写真力」はだいぶ混んでいた…

ジム・ジャームッシュ『リミッツ・オブ・コントロール』に登場する絵画群についての覚書き

ジム・ジャームッシュの『リミッツ・オブ・コントロール』を観た。唐突に挟まれる、皿の上に載せられた洋梨のカットがやけに記憶に残っている。 この映画で、わたしは二つのスペイン語のフレーズを憶えた。ひとつは仲間たちの合言葉になっている"Usted no ha…

美術鑑賞の新しい愉しみかた――〈ソーシャル・ビュー・ゲーム〉について

わたしは、このところお茶碗鑑賞に執心していて、その事の次第については改めてまた記したいと考えているのだが、ここでは先日の経験について一筆取ろうと思う。というのは、大阪の藤田美術館に足を運んだときのことである。藤田美術館では「ザ・コレクショ…

クラーナハ展―500年後の誘惑/蠱惑的な女のまなざしに取り憑かれ

国立西洋美術館で開催されていた、会期終了目前のクラーナハ展に駆け込んだ。この企画展に足を運んでいなければ、もしかするとクラーナハについて思考をめぐらせる機会は今後訪れなかったかもしれない。画家に焦点をあてた企画展は、ヨーロッパにおいては幾…

2016年、美術鑑賞の記録

テレビで日曜美術館の「ゆく美くる美」の特集を録画しておいたものを観た。せっかくなのでわたしも、2016年に足を運んだ展覧会のことを振り返っておこうと思う。美術に触れるという意味では、さほど充実していたとは言えなかった一年だったが、新たな一年へ…

ギュスターヴ・モロー美術館 ――十九世紀という〈崇高〉の経験

今年の春、とある理由で一ヶ月ほどパリに滞在することになったのだが、そのときに訪れたギュスターヴ・モロー美術館(Musée Gustave Moreau)での体験を記しておきたい。わたしはこのとき、崇高の意味を知ったのだった。 ギュスターヴ・モロー美術館は、パリ…

「日本におけるキュビスム ― ピカソ・インパクト」展

埼玉県立近代美術館で開催中の「日本におけるキュビスム ― ピカソ・インパクト」に訪れた。わたしはわりに近くに住んでいるのだが、この美術館を訪れたのは、草間彌生展以来二度目である。あのときは大盛況だった模様で、たしかに展示も充実していて面白かっ…