12 月 4 日 日曜日 日曜日のマルシェを覗く。Dupleix 駅からLa Motte-Piquet 駅まで、6番線の電車が走る高架下にずらりと連なるさまざまな露店。至るところから露天商と客たちの会話が聞こえてくる。まさにこの土地の生活様式が凝縮されている場所で、これだ…
12 月 2 日 金曜日 わたしの記憶のなかのパリは曇天だった。およそ四年振りに訪れたパリで、飛行機を降りて空を見上げると、まさにそうした記憶の映像と変わらないのっぺりした灰色の雲が一面を覆っている。それにしても寒い。職場が手配してくれたハイヤー…
現代日本文学読書会の記録を認めたので、もうひとつの海外文学読書会のことも書き留めておく。2019年4月に何人かの友人知人を誘ってはじめて、コロナ禍による一時中断も挟みながらも、だいたい月に1回のペースで3年ぐらい続けていた。わたしの怠惰もあって30…
職場の同僚を何人か誘って、2021年1月からほぼ月に1回のペースで、現代日本文学の読書会を開催していた。あらかじめ一冊選書をして、読書会当日までに読了してくればよいというルールで、およそ二年にわたって続けることができた。わたしの身辺状況が変わっ…
一年前にはじめた映像日誌をいまも撮り続けている。YouTubeの更新は昨年来止まっていたのだが、奇しくもわたしの友人にも同様に映像日記を撮っている人たちが何人かいて、たまにお互いの撮った映像を見せ合うなどといった遊びに興じていた。そのときによって…
日本全国の阪神ファンは、待ちに待った2022年のプロ野球開幕からのあまりに酷たらしい二週間をどのような心境で過ごしているのだろう。セ・リーグ記録の開幕9連敗を経て、西の完封勝利で辛うじて1勝を挙げて連敗記録を止めるも、翌日の試合では「あと1球」で…
五つ目のショットで現実と虚構のあいだに張られていたスクリーンが突如として破られる。車輌のフロントガラスはロシア兵の放つ銃弾によって破壊され、以後に続くいくつかのシーンでは、主人公は境界の向こう側で酸鼻たる現実の只中に勾留されてしまう。その…
マンハッタンのウエスト・サイドは再開発によっていまにも土地の記憶が葬られようとしている。ギャングの残党たちは毀れゆく廃墟となったシマを怯えながら歩きまわる。61年の映画版と較べてなによりもまず印象的だったのは、全体に通底するこの斜陽のイメー…
2021年4月の本棚。今月はあまり読めなかった。積ん読はなし。 * * * 早稲田松竹でダミアン・マニヴェルの『イサドラの子供たち』の上映に駆けつけて、とめどなく溢れ出す涙でマスクを完全にだめにしてしまった。二年前のヤマガタではじめてこの作品を観たと…
youtu.be iPhone を新調した。カメラの性能が優れているという触れ込みの機種を構えて、生活の合間合間にビデオを撮った。ある程度のヴォリュームになったので、2021年10月に撮影したフッテージから編集を施して、4分と少々の動画にまとめた。タイトルは三宅…
2021年3月の本棚。『星の時』から左は積ん読です。 * * * 雪舟にご執心。きっかけは李禹煥が雪舟の魅力を語るという「日曜美術館」の番組録画を見たことだった。それまで雪舟についてはほとんど教科書に載っている知識しかないに等しかったのだが、番組で紹…
女 わたしたちの関係って、友だちって言ってしっくりくる? 男 ・・・おれはまあしっくりくるかな。 女 友だちなのは友だちだもんね。 男 そうね。 女 でもただの友だちって言われるとまたちょっと違うじゃん。 男 うん。難しいよね。 女 お互いに理解しあっ…
2021年2月の本棚。『高架線』から左は積ん読です。眺望のいい家に越したので、これから暖かくなっていくのが楽しみです。 * * * 球春到来。コロナの影響はありながらも、今年も例年どおり無事にプロ野球はキャンプに突入することができた。阪神タイガースの…
先月の本棚に引き続き、2021年1月の本棚。さて、この記録はいつまで続くでしょうか。気長にやっていきたいものです。 先月の本棚に登場した本も多々あるものの、『監督 小津安二郎』から右は、今月読んだ本。志賀直哉の新潮文庫から左は、新たに迎え入れた積…
一年前の師走、わたしは何を考えていたのか、ほとんど憶えていない。日記の類も断片的にしかつけておらず、そこに残されていないものは、ひょっとすると失われてしまったのではないかと悲しい気分に陥ってしまう。 みずからの健忘症に抵抗せねばならない! …
八月十八日 火曜日 亡霊たち 職場を出たのはすでに23時を回っていた。つまりは14時間近くも働いていたことになる。いつものことといえばいつものことだが、いったい何をそこまですることがあるのだろう? ほとんどきょう一日の記憶を喪失してデスクをあとに…
かつて記事を投稿していたブログを久方振りに更新するとき、ひとは「これからは少しでもいいからなるべく記録を残していこうと思う」という、ほとんど独語ともいっていい、だれに向けているのか定かでない宣言をしてみせる。わたし自身も過去にそのような独…
2020年5月4日、仏作家のミシェル・ウエルベックが、パンデミックがはじまって以来、はじめてコロナ禍についての文章を公表しました。原文は仏ラジオ局「France Inter」に掲載(第三者によって朗読された音声もしばらくは聞けます)。すでにどこかで翻訳され…
12月29日(日) わたしはVHSを詰め込んだ紙袋をふたつ携えて、新宿から自宅までの最終電車に乗っていた。運良く座席に座れたので、リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』を読み進める。となりには15インチのMacBook Proで美少女ゲームに興じる中年男性…
12月20日(金) カードキーを忘れてしまったと職場に戻ったら、同僚からきみの首に巻かれているのはなんだいと問われ、思わず「うわあ」と口に出してしまった。遠くで部長が笑みを浮かべている。 中国の現代アートシーンについてのシンポジウムに向かう。中…
本日2月23日(土)、FESPACO 2019(第26回)が開幕した。FESPACO とは、ブルキナファソの首都ワガドゥグで隔年で開催されている映画祭 Festival Panafricain du Cinéma de Ouagadougou(ワガドゥグ全アフリカ映画祭)の通称であり、ブラック・アフリカにおい…
・このまま冬をすっ飛ばして、春が来るのではないかという陽光がつづく。いつもはすでに散っていてもおかしくない銀杏の葉にまだ緑色を認めることができる。 ・というように思っていたら、一気に冬がやってきた。あわてて冬物のコートを着た。外にいると指が…
・金木犀が香っていたのはほとんど一瞬のことにすぎなかった。 ・少し前からツイッターで、いわゆる裏アカウントをつくって、毎日140字の日記をつけはじめた。これまでわたしは数え切れないほど、いろいろなメディアで日記をつけようとしてきたが、ほとんど…
玉田企画の演劇は、一貫して関係性についてを思索しているように思われる。ある閉じられた二者関係に第三者が介在することによって、関係性のベクトルがいかに変容していくのか。ベクトルの矢印がふえたりへったりすることで、その場の空間の秩序はいかなる…
・ほとんど息をつく間も無いままに、颯爽と走り去っていった八月だった。もともと今年の夏はゆっくり夏目漱石でも読もうと文庫本を買い揃えていたのに、腰を据えて文庫本をひらくような時間はほとんどなかったような気がする。本棚に立ち並ぶ赤茶色の背表紙…
3月12日(月) ブリュッセル、ゲント 同じドミトリーに眠るひとたちとことばを交わすどころか、顔を合わせることのないままホテルをチェックアウトして、旧市街へと徒歩で向かう。わたしははじめて歩くブリュッセルにたいして、非常に奇妙な感覚を抱いていた…
国立新美術館の「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」に足を運んだ。世界大戦に乗じて武器商人として財を成したスイスの実業家のコレクションで、2008年の盗難事件をきっかけに閉館となり、2020年までに所蔵作品はすべて改装中のチューリヒ美術館に寄…
3月8日(木) パリ 日本のおむすびチェーンが海外進出をしていて、新たにパリに店舗をオープンしたそうだ。わたしは、仏留学時代の中国人の友人Oを誘って、オペラの近くにある日本人街の一等地にある店舗を訪れた。10ユーロ(約1,350円)でおにぎりふたつと…
3月4日(日) 東京、北京 出発の日。本当は一週間ほど前にヨーロッパへと渡航する予定だったのだが、フライトが予定されていたその日にインフルエンザに罹って、あえなく自宅謹慎の日々を過ごしたのだった。わたしはこのころ友人と映画を撮っていて、ほとん…
カフカの小説をときどき身体がひどく欲するので、仕方なしに餌としてカフカを与えることがある(カフカのことを考えはじめると、思考パターンまでもがカフカ的モチーフに侵食されてしまう)。今回もその生理現象が生じたので、フランツ・カフカ『変身』を読…