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阪神タイガースの2016年、来季への無邪気な期待とともに

野球

 2016年のシーズンが終わってから数ヶ月が経ち、年の瀬を迎えるにあたって、すでにプロ野球観戦の禁断症状が出かかっている。症状のひとつは、とくにおもしろい記事は見当たらないはずなのに、やたらとインターネットでスポーツニュースを覗きにいっているということだ。わたしの購読している新聞のスポーツ欄には、プロ野球はといえば契約更改のことが細かく書かれている程度なので、代わりにオンラインのニュースをひたすらに読み漁っている。オフ・シーズンはいろいろと妄想が膨らみ、ただただ希望に満ちている。「こうなって、こうなって…」と優勝へのシナリオを描くような希望的観測ばかりが心を横切っていく。とはいえ、いくら妄想を重ねたところで仕方がないので、本来ならばオフのあいだはきれいさっぱりと野球のことは忘れて、ほかの物事に熱中するべきなのかもしれない。わたしの可処分時間は限られていて、そのことにつねに焦りを感じているぐらいなのだから。まあ、それができれば苦労しないのだが。
 

 せっかくなので、阪神タイガースの2016年を振り返っておく。わたしは小学生のころから阪神ファンを自認しており、星野監督と岡田監督時代の阪神タイガースをよく観ていたのだが(2003年と2005年の優勝!)、それから2014年に至るまでプロ野球への関心をすっかり失ってしまっていた。海外に滞在しているとき、わたしのなかのノスタルジアが悪さをしたのか、野球熱がぶり返し、2015年のシーズンから阪神ファンに復帰することとなる。2015年同様、2016年もよく試合を観た。スタジアムで観戦したのは今年は神宮球場の一試合に限るが(生ビール半額ナイトの恩恵には十分に預かった)、テレビの前で懲りもせず呻いたり叫んだりする日々が続いた。趣味をスポーツを観戦とすることは、精神の健全に直結するので、非常によいものだ(と辛うじて自己肯定を試みている)。
 

 新たに金本監督の指揮のもとスタートした阪神タイガース。はじめは「超変革」というスローガンのネームセンスの無さに失望しきりだったが、いつのまにかわたしもそれを語彙として獲得してしまい、阪神の話題が上るときに「超変革」を多用してしまうほどだった。結果から見れば、セ・リーグの4位、Bクラスとなってしまったのだが、わたしは「超変革」はひとつの成功を収めたといっていいのではないかと考えている。

 それは鳥谷のスタメン落ちであり、北條の台頭であり、原口の支配下登録からの飛躍であろう。すなわち、積極的な野手の若手起用である。ドラ1の高山についてはいうまでもなく(すでにこのブログに高山俊についての文章(「高山俊は明らかに頭がいい」)は書いている)、中谷や板山といった、将来が楽しみな選手の姿も一軍の試合で頻繁に見れたことは大きい。ヤフコメの虎党たちを見ていても、外国人選手やFAでその場しのぎの戦力を補強に走るより、すぐに優勝はできずにBクラスに甘んじたとしても、ゆくゆくは長期にわたって優勝争いができるような戦力をじっくりと育成してほしいと願う者が多いようである。同じ戦力であれば若手を起用すると金本自身が明言しているが、チームにとって20歳と35歳のポテンシャルのどちらを大切にするべきかという問いの答えは明白であり、金本の方針は正しい。

 

 ただし、今年のカープの圧倒的な強さを鑑みてもわかるように、若手だけの力では優勝までは辿り着かないことも然りである。よくいうように、若手とベテランの力が相乗効果で組み合わなければいけないのであり、要するにその両者のバランスをどう配分するかということを問われているのである。バランスで考えれば、和田監督の時代は、江越や梅野といった幾人かの若手選手は積極的に起用されていたものの、やはりベテランに偏重ぎみだったといえよう。彼の時代、北條や陽川や中谷はずっと二軍で活躍しているという話を聞いていたのに、一軍にはほとんど上がってこなかったし、上がってきたところで出場機会が与えられるのはごく稀だった。

 どのような配分が正解なのか? これは非常にむずかしい。数字には測りきれないチームの雰囲気や各選手の人柄というものがあり、どのような組み合わせがハマるかということは素人目には何とも言いがたい。それを見極めることこそが、選手たちを間近で見守り、彼らと指導者という立場でコミュニケーションできる監督に定められたもっとも重要な責務であるだろう。今季は4位という結果に終わったが、この観点における金本監督の働きは、概ね満足している。あえてメッセンジャーを2016年の開幕投手に任命するところなど、うまく場の雰囲気をつくっていくことには長けているように見える。

 

 ベテランのいぶし銀より、若手の躍進に心が踊らされる。たとえば、原口という選手の物語には、夢と浪漫がつまっている。育成選手から支配下登録、1軍の出場に託つけた際には、自身の背番号の記されたユニホームの調達が間に合わず、「YAMADA」と書かれたコーチのユニホームを代用したまま出場し、二打席目にしてヒットを放ってしまう。そこからの躍進劇。長いあいだ怪我に泣かされて燻ってきた苦労人が、瀬戸際から一気に月間MVPを獲得するまでの破竹の活躍譚は、多くの者の心を掴んで離さない。もちろん、わたしもその一人である。

 原口は不思議な選手だ。あの打撃フォームで一振りすれば、なぜか打球はスタンドに届いてしまう。シーズン終盤にかけては調子が落ちてきていたが、ここぞという場面で必ず打つ時期もあった。何も根拠がないのに、打つに違いないという予感を見事なまでに回収することのできる選手である。

 わたしとしては、本人も明言しているように、来季は捕手一本でやっていってほしい。もとよりあまり梅野には期待がもてず、坂本も好きな選手ではあるが、まだ時期尚早という気がする。なにより、原口にはバッターとして輝く捕手となってほしいし、そのポテンシャルは十二分に秘めているように思う。今年一軍の試合出場を重ねたことで、本人の守備の課題はより明白になっただろうし、充実したオフを過ごしているのではないだろうか。WBC の選手を見てもわかるとおり、日本球界はいま深刻な捕手不足に陥っている。原口が日本を代表するような捕手になるためには、来季は正念場となるだろう。

 

 他の若手野手でいえば、北條と中谷のセンスにも大きな期待を寄せている。北條に至っては、今季は一軍の経験を積んだことで、着実に成長をしているように見える。ポスト・鳥谷として、今後の不動の遊撃手としての活躍に期待。中谷も、スケールの大きいバッターであるということは、今季の姿で十分に伝わった。外野手として守備に磨きをかけ(一塁手としての起用もありうる)、ゆくゆくは4番あるいは5番を打てるような、福留のような攻守揃った選手になってほしい。

 福留には本当に助けられた。来季はキャプテンを務めるオジさんには、まだまだ働いてもらわねばならない。ゴメスの不調や鳥谷の失墜に大きく振り回された一年だっただけに、ドメさんの意地には脱帽ものである。とはいえ、やはりひとりでは打線は躍動しない。打線が〈線〉として機能したのは、もしかすると今季数試合に限られるのではないか。打者一巡もさほどなかったし、残塁の数の多さといったら目も当てられない。とにかく得点力に欠けるチームである。 糸井の入団によって(ようこそ!)、打線の厚みが出るのではないか。

 

 一方、投手はどうだろうか。先発の柱が、阪神ほど盤石なチームはいないという開幕前の識者の評はなんだったのか。そういえば、タイガースを今季のリーグ優勝の筆頭候補に挙げていた者も幾人かいた。先発のメッセンジャー、藤浪、能見、岩田という4本柱の安定感はリーグ随一のもので、ここに岩崎や岩貞が入ってくれば…という話だったと記憶している。蓋を開けてみると、藤浪は不調、能見もいまいちうだつが上がらない、岩田は散々な一年で二軍暮らし。岩崎はあと一歩なにかが足りない。結局のところ、4本柱のうちで、活躍を収めたのはメッセンジャーだけだった。メッセンジャーという選手はかわいい。198cmの巨体だが、かわいさでいうとタイガース随一である(当社調べ)。

 一番のニュースは、岩貞の覚醒である。まったくもって素晴らしい投手だ。これほどのポテンシャルを秘めていたのかと驚きの連続だった。夏場に少し調子を落としたが、9月は5連勝で文句なしのMVP獲得。最後に2桁勝利に乗せてくれたことがうれしい。左腕の名先発は近年少なくなっているので、すでに球界にとっても貴重な存在になりつつある。来季、先発の柱として10勝は計算されるようになると思うので、重圧に負けずに、沢村賞獲得まで狙ってほしい。

 沢村賞に関連していえば、藤浪である。2015年の沢村賞に絡む水準での活躍もどこへやら、今季は非常に苦しんでいた。マウンド上で首をひねる様子をいったい何度見たか。藤浪は頭のいい選手である。それは間違いのないことだ。だが、今季はその頭のよさに足元を救われた気がしている。本人も、今季はいろいろなことをやりすぎてしまって、シンプルな野球ができなかった、と語っていた。確かにシンプルでいいのだ。ゆくゆくは頭脳派投手になっても、いまは若さと才能で打者へと向かっていくだけの能力は十分にあるのだから。しばしば大谷と比較されるが、わたし個人としては、それは仕方のないことであると思うし、比較対象であることを糧にしなければいけないとすら思う。かつて甲子園を舞台に戦った両エースが、日本球界を代表するエースに成長するというシナリオにもっと胸をときめかせてほしい。

 

 リリース陣。藤川球児に往年の勢いはもうない。藤川全盛期、それもJFKの時代からずっと見ているので、そのことには一抹の寂しさを感じる。不安藤はあまり顔を見せず、福原は引退してしまった。あのころの選手は、気づけばほとんど残っていないのだ。

 明るいニュースといえば、マテオとドリスだろう。マテオの三イニング跨ぎ登板という事件も起きたが、シーズンを通じて、怪我で抹消されたことを除けば、安定した成績を残した二人である。数字でいえば、期待以上の成績を残したといえるのではないか。ドリスの去就がまだ決まっていないようだが、ぜひとも残ってほしい。わたしは、ドリスが大好きなのだ。というのも、彼の性格のよさを買ってである。来日してまだ日が浅いころ、ドリスがはじめてヒーローインタビューに立ったのだが、なんと日本語で三言くらい言い放って、観客たちがいまいち状況を飲み込めずにざわついたことがあった。ああ、わたしがあの場にいたら大声を張って応えていたのにな。日本語を学ぼうとしている姿勢、日本文化に溶け込もうとしている姿勢が見れるのは、こちらとしても気持ちい。来季には、新たにやってきたメンデスと並んで、JFKならぬDMMの黒人トリオとして黄金時代を築いてほしいと密かに願っている(外国人選手の登録人数がネックになるのだが、2018年度のシーズンではメッセが日本人扱いになるのでいけるかもしれない)。

 先発としてはスタミナ不足が祟っていまいちポテンシャルを発揮しきれていなかった岩崎が、シーズン終盤にリリーフに配置されて、キレのいいストレートを投じたことがあった。わたしはこの配置転換はいけるのではないかと思っている。キレのいいストレートといえば、石崎にも期待している。怪我さえなければ、今年もっといい成績を残していたのは間違いないだろう。青柳もはじめは懐疑的だったが、だんだんコントロールをつけられるようになっていたので、来季は先発ローテを守ってくれることを信じたい。

 

 

 というわけで、以下、来季の開幕スタメンを予想してみる。

(中)糸井
(遊)北條
(左)高山
(右)福留
(捕)原口
(一)キャンベル
(二)鳥谷
(三)大山
(投)メッセンジャー

 大山は、高山のあとに続いて新人王獲得できるくらいの活躍に期待している。オープン戦次第ではあるが、あえて開幕スタメンに名を連ねた。佐々木を逃してのドラフト一位指名なのだから頑張ってもらわないと。鳥谷が下位打線にいるということで、相手に怖さを与えられるくらいの活躍が見たい。

 先発ローテでいえば、メッセンジャー、藤浪、岩貞、青柳は当確として、ここに能見と秋山あたりが絡んでくるだろうか。ノウミサンにもまだ働いてもらわないとならない。もう少し先発の計算できる枚数がいればな。今年のドラフトはどうなるだろうか。

 

 •••••• しかしこれ、優勝しかないのでは?

 

 

 ああ、5,000字も書いてしまった。そもそもこんな話は、呑み屋で済ませておけばよくて、わざわざエントリにするほどでもないのだ。こんなことにわたしの可処分時間が奪われてどうする。したがって、阪神タイガース、あるいはプロ野球を愛好し、わたしとの野球の話にお酒を片手に付き合ってくれる友人を探しています。来季は一緒に野球観戦に行きましょう。神宮のナイターは最高です。

 

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