本屋でもっとも万引きされている村上春樹の小説

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 インターネットを徘徊していると、このニュースに遭遇した。トロントのある本屋において、最近では、村上春樹の小説がもっとも万引きに遭っているというものである。記事の本文を読んでみると、かつては頻繁に万引きされていたのは、ケルアックやギンズバーグといったビート文学が総じてトップを占めていたが、次第に対象がナボコフ『ロリータ』へと移り変わってきた。その系譜に連なる、新たな潮流として村上春樹の小説がこのところ頻繁に盗難被害にあっており、二十五年も本屋を経営している店主は頭を抱えているとある。

 

 まったくおかしいではないか。わたしは思わず苦笑してしまった。もちろん、たった一冊の盗難被害で、どれだけ甚大なダメージが本屋にもたらせるかということは見知っている。万引き犯には、本ぐらい買いなさいと窘めたいところだが、しかし、村上春樹とは。

 ビート文学や『ロリータ』が万引きされやすいという事実は、ある意味ではとてもわかりやすい。前者は金のないヒッピーたちが犯行に及んだのだろうと想像しやすいし、『ロリータ』は、タイトルからいっても、内容からいっても、大きい顔をしてレジまでもっていく気が引けてしまう、という気持ちもわからなくもない。

 

 では、村上春樹は? がやがやと呑み屋で話すにはもってこいのテーマだ。がやがや。