2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧
今年の春、とある理由で一ヶ月ほどパリに滞在することになったのだが、そのときに訪れたギュスターヴ・モロー美術館(Musée Gustave Moreau)での体験を記しておきたい。わたしはこのとき、崇高の意味を知ったのだった。 ギュスターヴ・モロー美術館は、パリ…
2016年のシーズンが終わってから数ヶ月が経ち、年の瀬を迎えるにあたって、すでにプロ野球観戦の禁断症状が出かかっている。症状のひとつは、とくにおもしろい記事は見当たらないはずなのに、やたらとインターネットでスポーツニュースを覗きにいっていると…
彼の名はアカーキイ・アカーキエウィッチといった。あるいは、読者はこの名前をいささか奇妙なわざとらしいものに思われるかもしれない。しかし、この名前はけっしてことさら選り好んだわけではなく、どうしてもこうよりほかなに名前のつけようがなかった事…
わたしたちが映画について語るときにしばしば発せらるる「今年は豊作であった」という謂に、何ら意味を見出せなくなってしまった。考えてみれば当たり前でもある。いまの時代において〈すべての映画〉という概念の質的な掌握は背理でしかなく、およそ恣意的…
嫉妬した ――と表現するのがいちばん近いかもしれない。フランス語を学び、フランスでいくらかのかけがえのない時間を過ごし、そしてフランスという存在そのものへの執着を多少なりとももっているわたしにとって、そのような道の遥か先をゆく水林先生の存在は…
www.youtube.com VIDEOTAPEMUSIC『世界各国の夜』。このアルバムを手にしてからおよそ一年のあいだ、いったいどれほどの夜がこの愛おしき音楽によって救われただろうか。終電を逃し、ひとりで夜の東京の街をさまよいながら、イヤフォンを耳に突っ込んで歩き…
埼玉県立近代美術館で開催中の「日本におけるキュビスム ― ピカソ・インパクト」に訪れた。わたしはわりに近くに住んでいるのだが、この美術館を訪れたのは、草間彌生展以来二度目である。あのときは大盛況だった模様で、たしかに展示も充実していて面白かっ…
ひどかったとしか言いようがない。確かに美しいシーンはあった。とりわけはじめの海中のシーンは息を呑むような美しさを湛えていた。神秘的な碧の海に、鮮やかな赤いパンツを履いた白い肌の少年が潜ってくる。そのような色彩の感覚はいい。美点をあげようと…
『Boyhood(6才のボクが、大人になるまで。)』という傑作のあと、リチャード・リンクレイターが新たに世界に送り出したのは、本人の語るように前作の続編のようでもあり、またある意味では、まったく真逆の指向性のもとにつくられた(というように思われる…
テニスのルールすらほとんど知らなかったわたしが、あるときテニスというスポーツの熱狂的なファンへと変化を遂げてから一年半ほどが過ぎた。今年ははじめて一年を通してテニスの動向を追い続けてきた年だったのだが、まったくもって愉しくて仕方がなかった…