2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

本屋でもっとも万引きされている村上春樹の小説

www.cbc.ca インターネットを徘徊していると、このニュースに遭遇した。トロントのある本屋において、最近では、村上春樹の小説がもっとも万引きに遭っているというものである。記事の本文を読んでみると、かつては頻繁に万引きされていたのは、ケルアックや…

クラーナハ展―500年後の誘惑/蠱惑的な女のまなざしに取り憑かれ

国立西洋美術館で開催されていた、会期終了目前のクラーナハ展に駆け込んだ。この企画展に足を運んでいなければ、もしかするとクラーナハについて思考をめぐらせる機会は今後訪れなかったかもしれない。画家に焦点をあてた企画展は、ヨーロッパにおいては幾…

FESPACO 2017/アフリカ映画、コンペティション部門の作品たち

FESPACO 2017(第25回)の長編フィクション部門の選出作品が発表された。FESPACO とは、ブルキナファソの首都ワガドゥグで二年に一度開催される映画祭 Festival Panafricain du Cinéma de Ouagadougou(ワガドゥグ全アフリカ映画祭)の通称であり、ブラック…

欲望の交差点、ひとを喰ったような映画 / ニコラス・W・レフン『ネオン・デーモン』

鑑賞する前に、どこかで「ひとを喰ったような映画だ」という評を目にした。カンヌの舞台では、歓声と怒号が同時に飛び交ったという。わたしはそれなりに身構えて鑑賞に臨んだ。そして劇場を出るとき、なるほど、まさに〈ひとを喰ったような映画〉にほかなら…

異物に病みつきになるという経験 ―― ナカゴー『ベネディクトたち』

異物が口のなかに入りこんでくる。あなたは怪訝な顔をして、おそるおそる舌のうえで異物を転がし、その味を確かめんとする。意外にイケるかもしれない。緊張をとぎほぐしながらゆっくりと味わっていると、次第にまるで麻薬を摂取しているかのような感覚に陥…

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』―― 見事な 80 年代へのゲートウェイ・ドラマ

わたしはあらかじめ告白しておく。この作品について、いまの段階では願うとおりの文章が書けるとは到底思えない。80年代のアメリカでつくられたさまざまな作品群にオマージュが捧げられているのはわかるのだが、肝腎の引用先のカルチャーに精通しているとい…

2016年、美術鑑賞の記録

テレビで日曜美術館の「ゆく美くる美」の特集を録画しておいたものを観た。せっかくなのでわたしも、2016年に足を運んだ展覧会のことを振り返っておこうと思う。美術に触れるという意味では、さほど充実していたとは言えなかった一年だったが、新たな一年へ…

『天空からの招待状(看見台湾)』で寝落ちをするよい暮らし(という妄想)

わたしはこの数週間、台湾に執心している。インターネットの大海で「台湾」の文字が浮遊していないかとつねに目を光らせているし、友人たちと食事をするとなったら積極的に台湾料理店を選ぶようにしているし、侯孝賢や楊德昌といった台湾の監督たちのフィル…