2023-01-01から1年間の記事一覧

バスク旅行記 Ⅰ| 20230928 - 0930

9/28 木 Paris - San Sebastián (Donostia) 機体は太陽を背負って大西洋沿岸を降下していく。わたしは飛行機の窓からバスクの山々が織りなす不思議なリズムをもった景観を見下ろす。この土地を覆う草木の緑はフランスのそれよりもずっと濃く、深い色合いをし…

「L’art des charpentiers japonais」展関連映画上映

羽仁進監督『法隆寺』 © 記録映画保存センター パリ日本文化会館で開催中の展覧会「工匠たちの技と心――日本の伝統木造建築を探る」(2023/10/18 - 2024/1/24)にあわせ、日本映画を3作品上映します。「大工」「木造建築」というお題をもらって、わたしはその…

日誌 | 20230922 - 0927

9/22 金 中国語の飛び交うアジア料理店で、フランスで生まれたベトナム料理こと Bobun をひとり黙々と食べる。それまで中国語でお喋りに耽っていた客が「ヨボセヨ」と着信に応えるのを聞いて、わたしは思わずどんぶりから顔を上げた。流ちょうな韓国語を喋っ…

日誌 | 20230915 - 0921

9/15 金 ブローニュの森を抜けてパリ郊外の La Seine musicale に。坂茂がセーヌ川に浮かぶ中洲の建築を手がけ、つい最近名和晃平のモニュメントが設立されたコンサートホールである。ここにはかつてルノーの自動車工場が建っていたという。 バルタバスの演…

『交差する声』作品評(YIDFF公式ガイド「SPUTNIK」)

山形国際ドキュメンタリー映画祭公式ガイド「SPUTNIK」に、コンペティション部門に選出されたマリのドキュメンタリー『交差する声』についての作品評を書きました。アフリカがネオコロニアリズムから真に脱却するための農業協同組合の実践を記録した作品です…

日誌 | 20230909 - 0914

9/9 土 まだ日の上がらない時間にパリを出たトゥルーズ行きの列車で、昨日のル・モンド紙に掲載されたイランの獄中から届いた四人の女性たちの手記を読む。死刑廃絶を訴える政治活動に身を投じた女性は、懲役16年の判決を受けて2016年から獄中にいる。「この…

日誌 | 20230901 - 0908

9/1 金 今日でちょうど関東大震災から百年。数日前から百年前新聞というアカウントが投稿するツイートを熱心に追いかけていたが、これはツイッター(意地でも「X」と呼びたくない)というメディアにぴったりの試みだと思う。朝鮮人たちをめぐる流言が出回り…

日誌 | 20230729 - 0731

7 月 29 日 土曜日 Ólafur Arnalds がアイスランド南部の大自然を舞台に演奏するYouTubeの映像に釘づけになる。この映像の撮られた Hafursey という土地には、1755年のカトラ火山大噴火で逃げ込んだ六人の男たちが残した文字が洞窟の壁にいまも残っていると…

日誌 | 20230419 - 0422

4 月 19 日 水曜日 映画館の壁には『Showing Up』先行上映は満席という紙が貼り出されていた。どうにかしてチケットを手に入らないかと懇願する者たちが次々と Grand Action の入口にやって来ては肩を落として去っていく。ケリー・ライカートは、東京にたが…

フランスにおける「映画館のサブスク制度」(「Arthouse Press」)

コミュニティシネマセンターが運営する「Arthouse Press」に、フランスの映画館のサブスク制度についてのレポートを寄稿しました。月額20ユーロそこそこで、シネコンから名画座まで、パリのほとんどの映画館で映画が見放題になるという夢のような制度です。…

日誌 | 20230415 - 0418

4 月 15 日 土曜日 カレーにいんげん豆は相性が悪いと学んだ。チーズ屋とパン屋に仕入れにいったら、どちらの店でも目の前に並んでいた客が、わたしが頼もうとしていた組合せどおりに頼んでいて、いくらかバツの悪い思いをしながら全く同じ注文をする。まる…

日誌 | 20230121 - 0127

1 月 21 日 土曜日 一年にわたって開催された「男はつらいよ」全50作品連続上映は、この日のシリーズ50作目にあたる『おかえり 寅さん』('19)上映でひとつの区切りを迎えた。今日も会場には二百人近くの観客が詰めかけている。作品上映前にはフランスで山…

日誌 | 20230117 - 0120

1 月 17 日 火曜日 パリに拠点を置く諸外国の文化機関連盟の総会に出席する。この日の会場は在仏カナダ大使館。はじめの主宰者挨拶で文化機関としてウクライナへの連帯を表明することの必要性があらためて強調された。とても風通しのよい会合で、わたしはこ…

日誌 | 20230114 - 0116

1 月 14 日 土曜日 浴槽に浸かってから眠りにつくと目醒めの良さがまったく違う。地下鉄に乗って Itzy のプロデューサーのソロプロジェクトである 250『PRONG』(’22)を聴く。ポンチャックという韓国歌謡を現代ふうに再解釈したダンス・ミュージックで、一…

日誌 | 20230105 - 0113

1 月 5 日 木曜日 朝方にシャルル・ド・ゴール空港に着いて、 B 番線でパリ市内へと向かう。ちょうど通勤ラッシュの時間帯で、仕事に向かう人たちが続々と乗り込んできた。腹ごしらえをしてからマルセル・プルースト小径のベンチに深く腰掛けて、久し振りに…

ニューヨーク旅行記 Ⅲ | 20230101 - 0104

2023年1月1日 日曜日 新年を迎えたばかりのタイムズ・スクエアは狂騒のうちにあった。音楽が鳴り響き、紙吹雪が舞い散り、ごった返す人々が騒ぎ立てる様子をテレビ越しで眺める。わたしはそこから20マイルほど離れた静かな場所で、きっとだれもがそうである…

ニューヨーク旅行記 Ⅱ | 20221228 - 1231

マンハッタン・ブリッジからの夕暮れ 12 月 28 日 水曜日 朝方にひとりで外に出て、ルーズベルト・アイランドを散策する。八階建ての立体駐車場の最上階まで階段で駆け上がって、息を切らしながら東西の対岸に広がる景色を見た。わたしは本当に細長い島の上…

ニューヨーク旅行記 Ⅰ | 20221224 - 1227

ルーズベルト・アイランドの鳩とマンハッタンの街並み 12 月 24 日 土曜日 サン・ラザール駅前のカフェで朝食を摂ってからシャルル・ド・ゴール空港に向かう。搭乗ゲートの横に設えられたテレビでは、アメリカ東部を襲う記録的な大寒波について報じられてい…

映像日誌 | January, 2023

youtu.be 2023年1月の映像日誌。ニューヨーク、パリ、ロッテルダム。古今東西の列車。 年末年始を過ごしたニューヨークからパリに帰って、7区のアパートに身を落ち着かせた。ニューヨークの日々があまりにも眩しく、帰国してすぐの頃は、わたしはどうしてニ…

日誌 | 20221221 - 1223

12 月 21 日 水曜日 パリ着の翌日に逢着したイラン料理屋を再訪する。今日はタブリーズという地方の郷土料理のクーフテ(肉団子)をいただく。ソースにはサフランやニンニク、赤玉葱を煮込んだもので昨夜から仕込んでいたんだと、店主が鍋を取り出して見せて…

日誌 | 20221218 - 1220

12 月 18 日 日曜日 日曜日の晴天。わたしがパリに到着してからの二週間というもの、これだけ澄み渡った青空が広がっている日は数えるほどしかなかった。相変わらずの低温だが、晴れているだけで気分はいい。サン・ラザールの仮住まいから出かけて、しばし辺…

フュースリ展 Füssli, entre rêve et fantastique

パリ8区のジャックマール=アンドレ美術館で開催されていた「Füssli, entre rêve et fantastique(フュースリ、夢と空想のはざまで)」という企画展に足を運ぶ。フュースリ(1741-1825)は、スイスに生まれ、18世紀後半から19世紀初頭にかけてイギリスで活躍…

日誌 | 20221215 - 1217

テオドール・シャセリオー《十字架降下》, 1855, Église Saint-Philippe-du-Roule. 12 月 15 日 木曜日 病み上がりで一週間ぶりに出勤。同僚たちがみな心配をしてくれていた。まだろくに喋ったこともない人もいる職場の同僚たちに、わたしはいきなり病欠者と…

映像日誌 | December, 2022

youtu.be 2022年12月の映像日誌。東京、パリ、ニューヨーク。クリスマスの気配。 12月の頭に東京を離れ、パリに移り住んだ。これからしばらくはこの土地で暮らすことになる。まだパリにはあまり友人もいないし、住居も決まっていなかったので、クリスマスイ…

日誌 | 20221209 - 1214

12 月 9 日 金曜日 目が醒めた刹那、やってしまったと悟った。40度を上回る高熱。悪寒が止まらず何重にも毛布にくるまり、突き刺すような頭痛に悶える。喉にも違和感がある。これはコヴィッドかインフルエンザだ。働きはじめの五日目にして職場に休みの連絡…

日誌 | 20221204 - 1208

12 月 4 日 日曜日 日曜日のマルシェを覗く。Dupleix 駅からLa Motte-Piquet 駅まで、6番線の電車が走る高架下にずらりと連なるさまざまな露店。至るところから露天商と客たちの会話が聞こえてくる。まさにこの土地の生活様式が凝縮されている場所で、これだ…