映像日誌 | January, 2023

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 2023年1月の映像日誌。ニューヨーク、パリ、ロッテルダム古今東西の列車。

 年末年始を過ごしたニューヨークからパリに帰って、7区のアパートに身を落ち着かせた。ニューヨークの日々があまりにも眩しく、帰国してすぐの頃は、わたしはどうしてニューヨークではなくパリにいるのだろうと気を落としさえしたのだが、新生活も少しずつリズムが生まれてきた。仕事前に行きつけのカフェに足を向けて、エスプレッソとパン・オ・ショコラをいただく日課を続けるうちに、この暮らしも愛せるかもしれないという実感がゆっくりと胸もとに下りてきたのだった。一方のロッテルダムは映画祭にあわせて四日間の短期滞在。パリを発って、たった三時間列車に乗っているだけで、ベルギーを横断して、オランダへと到着する。そこではフランスとはちがう街並みがあって、ちがう言語が話されていて、ちがうものが食べられている。この感じは日本にもアメリカ合衆国にもないヨーロッパならではの素晴しさだ。

 ところで、見知らぬ他人にカメラを向けることは暴力的な行為である。わたしの映像日誌もいってしまえば暴力にあたるわけだが、わたしは被写体となる他人を固有の人物としてではなく、あくまで風景の一部として、運動の主体として撮影しているつもりである。とはいえこれは撮影者の御託であって、その認識がなんであれ、見知らぬ他人からカメラを向けられて心地よく思う人はいない。だから撮影に気づかれないぎりぎりの距離で「窃視」する。しかしこれもまた暴力でしかないことは重々承知していて、わたしはそのジレンマのなかでこの映像日誌を続けている。人でなしの道楽と謗られても甘んじて受け入れるしかない……と思っていたのだが、最近は撮影スタイルにひとつ大きな変化があった。これまで以上に被写体とコミュニケーションをする機会が増えたのだ。この映像日誌に映された映像の前後にも、被写体とのいい思い出がいくつも残っている。